『マンション管理士と管理業務主任者、徹底解説』
マンション管理のプロフェッショナル資格として知られる「マンション管理士」と「管理業務主任者」。近年、マンションの高経年化や管理組合の高齢化に伴い、これらの資格保持者への需要が高まっています。国土交通省の統計によると、2023年には築40年を超えるマンションが136万戸を超え、専門家による適切な管理の重要性が増しています。
この記事では、マンション管理士と管理業務主任者について、それぞれの特徴や違い、試験情報、資格を活かしたキャリアプランまで、詳しく解説していきます。特に最近注目を集めているダブル取得についても、具体的な学習方法とともにご紹介します。これから資格取得を目指す方はもちろん、すでに一方の資格を持っている方にとっても、有益な情報となるはずです。
マンション管理士と管理業務主任者、それぞれの資格の特徴と違い
マンション管理のプロフェッショナルとして知られる2つの国家資格があります。
マンション管理士と管理業務主任者です。両者はマンション管理のスペシャリストでありながら、その立場や役割は大きく異なります。
マンション管理士は管理組合の立場に立ってアドバイスを行う「管理組合のコンサルタント」、管理業務主任者は管理会社の一員として「マネジメントのエキスパート」として活躍します。それぞれの特徴と違いを詳しく見ていきましょう。
マンション管理士の役割と仕事内容
マンション管理士は、マンションの管理組合や区分所有者の味方となって、適切な管理運営をサポートする専門家です。
主な業務には、管理規約の作成や見直し、大規模修繕計画の策定支援、管理組合の運営に関するアドバイスなどが含まれます。例えば、居住者間のトラブル解決に向けた助言や、管理費の適切な使用方法についての提案なども行います。
特に重要な役割は、専門的な知識を活かして管理組合の意思決定をサポートすることです。マンション管理士の存在により、管理組合は法的な問題や技術的な課題に適切に対応できるようになります。
管理業務主任者の役割と業務範囲
管理業務主任者は、マンション管理会社に所属して管理業務の最前線で活躍するプロフェッショナルです。
その主な業務は、管理組合との管理委託契約に関する重要事項の説明や、日常的な管理業務の監督・報告です。具体的には、建物の維持管理状況のチェック、管理費の収支報告、工事業者との調整などを担当します。
法律では、マンション管理会社に対して一定数の管理業務主任者の設置が義務付けられており、30の管理組合につき1人以上の割合での配置が必要です。管理業務主任者は、管理会社と管理組合をつなぐ重要な架け橋としての役割を果たしています。
両資格の法的な位置づけと必要性
マンション管理士と管理業務主任者は、いずれもマンションの適正な管理を実現するために不可欠な国家資格として位置づけられています。
マンション管理士には管理組合への助言や指導を通じて、マンション管理の適正化を推進する役割が期待されています。
一方、管理業務主任者には管理会社による適切な管理業務の遂行を確保する役割があります。近年、マンションの高経年化や管理組合の高齢化に伴い、両資格の重要性は更に高まっています。国土交通省の統計によると、2023年には築40年を超えるマンションが136万戸を超え、専門家による支援の必要性が増しています。
マンション管理士・管理業務主任者の試験について詳しく解説
両資格とも国が認定する国家資格であり、試験に合格することが資格取得の第一歩となります。
試験制度は異なる機関が実施していますが、試験日程が近く、出題範囲も重複する部分が多いのが特徴です。
マンション管理士試験は公益財団法人マンション管理センター、管理業務主任者試験は一般社団法人マンション管理業協会が実施機関となっています。どちらの試験も50問の択一式で実施され、合格ラインは70%程度です。
試験日程と受験の申し込み方法
マンション管理士試験は毎年11月の最終日曜日、管理業務主任者試験は12月の第一日曜日に実施されます。
令和7年度の場合、マンション管理士試験は11月23日（日）、時間は13時から15時までの2時間です。受験地は札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡、那覇の主要8都市で実施されます。申し込みは令和6年度からインターネットでの受付が開始され、受験手数料は9,400円となっています。
出願時期は例年8月上旬から9月末までです。試験で使用される法令等は、その年の4月1日時点で施行されているものが対象となります。
試験範囲の違いと学習ポイント
両試験は8〜9割程度が共通の出題範囲ですが、それぞれの立場を反映して重点の置き方が異なります。
マンション管理士試験では区分所有法や建築・設備関連の出題比重が高く、より専門的な知識が問われます。一方、管理業務主任者試験では管理実務や契約関連の出題が多くなっています。
マンション管理士試験では年間約500時間、管理業務主任者試験では約300時間の学習時間が必要とされています。効率的な学習のためには、まず管理業務主任者試験の範囲から学習を始め、その後マンション管理士試験の専門的な範囲に進むことがおすすめです。
マンション管理士試験の合格率と傾向
マンション管理士試験の合格率は例年7〜12%程度で推移しており、2023年度（令和5年度）の合格率は10.1%でした。
1万人以上が受験する中で、合格者は1,000人程度にとどまる難関試験です。試験では特に区分所有法の理解度が重視され、約12問が出題されます。また、建築・設備分野からは約15問が出題され、都市計画法については管理業務主任者試験にない独自の出題範囲となっています。
合格に必要な得点は50点満点中36点前後（約72%）で推移しており、確実な得点力が求められます。
管理業務主任者試験の合格率と傾向
管理業務主任者試験の合格率は20%前後で推移しており、2023年度（令和5年度）は21.9%でした。
マンション管理士試験と比べると、比較的挑戦しやすい試験といえます。毎年15,000人以上が受験し、約3,000人が合格しています。試験では特に民法や標準管理委託契約書関連の問題が重視され、実務的な知識が問われます。
民法からは約10問、標準管理委託契約書等・会計からは約9問が出題されます。近年は実務に即した具体的な事例問題が増加傾向にあり、単なる暗記ではなく、実践的な理解が必要とされています。
ダブル受験のメリットと効率的な学習方法
マンション管理士と管理業務主任者のダブル受験が注目を集めている理由は、試験範囲の重複と試験日程の近さにあります。
両試験の出題範囲は8〜9割が共通しており、効率的な学習が可能です。また、管理業務主任者試験で基礎を固め、その後マンション管理士試験に挑戦するという段階的な学習方法も人気を集めています。
実際に多くの合格者がこの戦略で成功を収めているのです。
なぜダブル受験が推奨されているのか
両資格のダブル取得が推奨される背景には、実務上の大きなメリットがあります。
マンション管理士として管理組合側の視点を、管理業務主任者として管理会社側の視点を持つことで、マンション管理の全体像を把握することができます。また、片方の試験に合格すると、もう一方の試験でマンション管理適正化法の5問が免除されるという制度的なメリットもあります。
さらに、管理業務主任者試験で基礎的な部分を学習し、その上でマンション管理士試験の応用的な内容に取り組むことで、より深い理解が得られます。近年では、不動産管理会社がダブルライセンス保持者を優遇する傾向も見られ、キャリアアップの観点からも効果的な選択となっています。
独学でのダブル受験の進め方
独学でダブル受験に挑戦する場合、まずは管理業務主任者試験の範囲から学習を始めることをおすすめします。
テキストは最低3回は読み込み、1回目は全体の流れを把握、2回目は詳細な理解、3回目は重要ポイントの確認という段階を踏みます。
その後、過去問演習で実践力を養いながら、マンション管理士試験の独自範囲である都市計画法などの学習に進みます。具体的な学習時間の目安として、1日2時間の学習で9ヶ月程度の期間が必要です。ただし、独学の場合は学習の進捗管理が重要で、月単位での学習計画を立て、定期的に理解度をチェックすることが大切です。
おすすめの学習教材と活用法
効率的な学習のためには、適切な教材選びが重要です。
基本テキストは、両試験に対応した総合的な内容のものを選びましょう。特に、法改正に対応した最新版であることを確認することが大切です。また、過去問題集は最低でも直近3年分を繰り返し解くことをおすすめします。動画講座やeラーニング教材も、時間や場所を選ばず学習できる点で効果的です。
さらに、重要な判例や法改正情報をまとめた要点集も、試験直前の総復習に役立ちます。学習の進度に応じて、基本教材から応用教材へと段階的にステップアップしていくことで、効率的な知識の定着が期待できます。
マンション管理士・管理業務主任者の資格を活かしたキャリアプラン
マンション管理のプロフェッショナル資格は、不動産業界でのキャリアアップに大きな可能性を開きます。
国土交通省の統計によると、2023年には築40年超のマンションが136万戸を超え、管理の専門家への需要は年々高まっています。特に管理業務主任者は管理会社への就職に有利で、マンション管理士は独立開業の道も開けています。両資格を持つことで、さらに幅広いキャリア選択が可能になります。
資格取得後の具体的な求人状況
マンション管理業界では、特に管理業務主任者の需要が高まっています。
法律で管理会社に一定数の設置が義務付けられているため、常に求人が存在します。具体的には、大手管理会社での正社員募集や、中小の管理会社でのマネージャー職など、様々な雇用形態での募集があります。
給与面では、資格手当が付くケースも多く、未資格者と比べて20〜30万円程度の年収アップが期待できます。また、マンション管理士としては、管理組合のコンサルタントや自治体の相談員として、時給5,000円以上での業務委託案件も増えています。
収入アップと転職への活用方法
両資格を活用した収入アップの方法は複数あります。
まず、管理会社での正社員として、資格手当や役職手当を得る方法です。次に、マンション管理士として個人で管理組合のコンサルティング業務を請け負う方法があります。さらに、不動産会社や建設会社のマンション管理部門への転職も、有力な選択肢となっています。
実際の転職事例では、管理業務主任者の資格を活かして、年収が500万円から700万円に上がったケースや、マンション管理士としての実績を基に、コンサルティング会社の管理部門責任者として年収1,000万円を超えるポジションに就いた例もあります。
独立開業のための準備と方法
マンション管理士として独立開業する場合、まずは2〜3年の実務経験を積むことが推奨されます。
開業形態としては、個人事務所の開設や、複数の資格者でコンサルティング会社を設立するケースが一般的です。開業時の初期費用は、事務所賃料や広告費を含めて100万円程度が目安となります。
集客方法としては、管理組合向けセミナーの開催や、自治体の相談窓口への登録が効果的です。事業が軌道に乗れば、月収50万円以上も十分可能です。ただし、信頼関係の構築が重要なため、地道な営業活動と実績作りが成功の鍵となります。
よくある質問
マンション管理士と管理業務主任者の資格取得を検討する際、多くの方が悩む点について解説します。
特に多いのが、どちらの資格から取得すべきか、試験の免除制度はどうなっているのか、そして宅建との関連性についての質問です。これらの疑問に対する答えを理解することで、効率的な資格取得への道筋が見えてくるでしょう。
資格取得の順番について
資格取得の順番として最もおすすめなのは、まず管理業務主任者から取得することです。その理由は大きく3つあります。1つ目は合格率が比較的高く（約20%）、達成感を得やすいことです。2つ目は、実務的な基礎知識を身につけられることです。3つ目は、合格すればマンション管理士試験で5問が免除されるメリットがあることです。また、管理業務主任者は就職にも直結しやすく、実務経験を積みながらマンション管理士の学習を進められるという利点もあります。ただし、すでに不動産や法律の知識がある方は、より難しいマンション管理士から挑戦するという選択肢もあります。
試験の免除制度について
両資格の試験では、相互に一部科目の免除制度が設けられています。具体的には、どちらか一方の資格を持っている場合、もう一方の試験でマンション管理適正化法に関する5問が免除されます。また、マンション管理士試験に不合格でも、一定の点数（おおむね60%以上）を獲得していれば、次回以降の管理業務主任者試験で同様の免除を受けられます。逆に、管理業務主任者試験で一定の点数を取得していれば、次回以降のマンション管理士試験で免除を受けることができます。この制度を活用することで、効率的な資格取得が可能になります。
宅建との関連性について
宅建（宅地建物取引士）との関連性は非常に高く、学習内容に重複する部分が多くあります。特に区分所有法や民法などの法律分野は、宅建の学習でも扱う内容です。そのため、宅建資格を持っている方は、マンション管理士や管理業務主任者の学習がスムーズに進むことが多いです。また、3つの資格を組み合わせることで、不動産取引からマンション管理まで、幅広い業務に対応できるプロフェッショナルとして活躍できます。実際、多くの不動産会社が宅建とマンション管理の資格保有者を優遇しており、キャリアアップの観点からも効果的な組み合わせといえます。
マンション管理士と管理業務主任者、あなたに合った資格選びのポイント
マンション管理のプロフェッショナル資格には、それぞれ特徴があり、自分の目的に合わせて選択することが大切です。
管理組合のサポートに興味がある方はマンション管理士を、管理会社での正社員としてのキャリアを目指す方は管理業務主任者を選ぶのがおすすめです。ただし、近年の傾向として、ダブル取得によってより幅広い活躍の場を得る方が増えています。あなたの目標や現在の状況に応じて、最適な取得戦略を立ててみてはいかがでしょうか。
